公式サイトのトップ画面にこんなコピーがある Pogoplug(ポゴプラグ)は、個人で簡単にクラウド環境を作ることができる製品だ。
自宅のパソコン環境を「クラウド」と呼べるかどうかはさておき、PC内のデータに外部からもアクセスできる状況を簡単に(それも、超簡単に!)構築できる。
その手軽さ、設定の簡単さという意味では、画期的なことは間違いない。
今まで苦労してやってきたことはいったい何だったんだろう、最初に思ったのはそれだ。
2011年7月現在、Pogoplug についてあまりネガティブな情報は聞かないが、良いところも悪いところもまとめてみようと思う。
まずは、お金をかけずにやれることを試してみよう、の巻だ。
●ソフトウェアだけのサービスが始まった
Pogoplug デバイスは、手持ちのハードディスクを共有することのできる小さなデジタルデバイスだ。プラグコンピュータの一種。
NAS(ナス:Network Attached Storage)を手軽に構築できるデバイス、という説明がされることがある(だけど、これは本質じゃないと思う←理由は、別記事で)。
で、その Pogoplug デバイスを開発・販売している会社(Cloud Engines 社)から、6月に「Pogoplug ソフトウェア」が発表された。
ソフトウェアだけで、パーソナルクラウドを作れます、という話だ。
今までも、PCにインストールするソフトウェアは必要だったが、あくまで、Pogoplug デバイスの購入者がそれを利用するためのクライアントソフト、という位置付けだった。今度は、デバイスを購入しなくても、その共有化機能のソフトウェアが使えますよ、ということだ。
元々「Pogoplug」と言えば、デバイスとそれに付随するサービスを指すものだったが、今度から「Pogoplug デバイス」と「Pogoplug ソフトウェア」を区別しないといけない。ソフトウェアだけでも一つの製品・商品に格上げされたんだから。しかも、フリーウェアとして公開されるとあっては試さなければならない。
以下は、 Pogoplug ソフトウェア(フリー版)の使用体験記録と感想だ。
●フリーウェアだけでできることを確認
Pogoplug というサービスは、今回から「フリーでも使え、お金を払えば(=ソフトウェアをプレミアム版にすれば)できる機能が増え、デバイスを購入すればもっといろんなことができますよ」という形態になった。
各製品の違い(公式サイト内) |
- デバイスを購入しなくとも、ソフトウェアだけでできること
- PC内のフォルダへのLAN環境外部からのアクセス(モバイル機器からもOK)
- 第三者へのファイル(フォルダ)の公開
- PC内の動画&音楽をモバイル機器でストリーミング再生(プレミアム版のみ)
- デバイスを購入するとできるようになること
- PCとは独立した共有ストレージの構築
- クラウドプリント
この表の通りなら、プレミアム版の追加機能は音楽と動画のストリーミング再生だけ。そのために支払う29ドルは高額な気もするが、いや、これは一回こっきりの払い込みの価格なわけで(つまり、年額制とかじゃない!)そんなに高いとも思えない。
だけど、試すのは、フリー版だ!
製品紹介ページには、Pogoplug デバイスは2種類しか載っていない。WiFi 対応の Pro版や、動画のストリーミングに特化した Video版もあったはずだが、もう販売されていないということだろうか?(Video版は、発煙事故が複数発生し、リコールの最中だとのことだが…)一番の機能は、「LAN環境外部からのアクセス」だ。
どれくらい簡単に、設定できるのか試してみよう。
●ソフトウェアのインストールとそれが利用できるまでの手順
まずは、公式サイト内のダウンロードページで、PCかMacのソフトウェアをダウンロード、そしてパソコンへインストール。
・→Pogoplug 公式サイト
(英語表示の場合は、左上の言語で「日本語」か「Japanese」に切替)
インストールが完了するとアクティベーションウイザードが起動する。
「新規にアカウントを登録」を選び、メールアドレス(アカウント)とパスワードを入力し、「次へ」を押していくだけ。
「スキップ」するか、ツアーが終わると最後に、アクティベーション完了画面となる。
この画面のまま、メーラー等を開き、「Click here …」をクリックした後に、ウイザード画面にチェックし、インストール&アクティベーション完了。
これで、タスクトレイ(MacOSX ならタスクバー)に Pogoplug アイコンが表示され、以降の設定等はそのアイコンから行うことになる。
う~む、本当にこれだけで設定が完了したのか不安だ。
変化と言えば、タスクトレイへのアイコンと、エクスプローラに「Pogoplug(P:)」という見慣れぬドライブが追加されていることだけ。
タスクトレイアイコンの「Pogoplug環境設定を開く」で、何やらできそうなのだが、ここは何もしないで、もう1台の別のパソコンへもソフトをインストールすることにした。
インストール後のウイザード画面の最初で、今度は「既にアカウントをお持ちの方」を選び、メールアドレスとパスワードを入力し、「次へ」を押すだけで完了。メール返信でのアクティベーションは不要だ。
●2台のパソコン間でできることは、かなり寂しい...ところが…
これで、2台のパソコンに Pogoplug ソフトウェアをインストールしたわけだ。
で、片方のパソコンの「Pogoplug(P:)」を開くと、もう1台のパソコン内のフォルダが見えている。逆も同じ。
これは、ウイザード時の「リモートアクセスを設定するフォルダを選択」画面でチェックした内容だ。この内容は「Pogoplug環境設定を開く」から変更できる。
うん、うん、ちゃんと動いている。
ドラッグ&ドロップも、削除もプロパティも、普通に動作している。
だけど、これだけなら、ただの「フォルダ共有」にしか過ぎない!
わざわざ、特別なソフトをインストールしてまで試すようなことじゃない。
いや、iPhone 等のモバイル機器からも、こうしたフォルダの内容にアクセスできることは、少し、クラウドっぽいといえるか。
いやいや、それなら、DropBox(ドロップボックス)や SugarSync(シュガーシンク)でも簡単にできるし(しかもカッコよくできる)、ZumoDrive(ズーモドライブ)なら音楽のストリーミング再生だって可能だ。
あまり、意味がない。
あまり意味がなくもない唯一の点は、携帯電話から扱えるファイルの容量だ。他のサービスがどんなにお金を積んでもたかが数百ギガバイト(笑)しか扱えないのに対して(10年間で100万円を超える金額をかけても!)、このソフトウェアだけで、容量の制限を考えることなく、自分のパソコン内の全ファイルにアクセスできる、ってのは、やはりスゴイことかもしれない。で、1台のパソコンを外部に持ち出すことにした。最初からやるつもりだったことだ。
で、外部のネット接続可能な環境で、Pドライブ(Pogoplug(P:))を開くと…
なんと、そのまま、自宅のパソコンのフォルダにアクセスできてしまえる!
ルータの設定とか何もいじってないのに、LAN環境内で操作している時と同じように(応答速度は当然、遅いが)普通に、エクスプローラで、別のパソコン内のリモートアクセスを許可したフォルダが扱えてしまう。
これは、すごいことなんじゃないか。
ソフトをインストールしたパソコンさえあれば、どこからでも自宅のパソコンへ(当然、その逆へも)アクセスできるわけで、もう、VPN(Virtual Private Network)使ったファイルサーバの設定で悩んだりしなくてもよくなるんじゃないか。
まさに、パーソナルクラウド!
こりゃ、感動的だ。
リモートアクセスの設定は、PCごとに「有効」「無効」にすることもできる。また、各パソコンに接続された外付けHD内のフォルダでも、さらには、ドライブが割りつけられてさえいれば、ネットワークドライブでも、リモートアクセスを許可するフォルダとして設定できる(←どんな意味があるのかは不明)。だけど、冷静になってよく考えてみたら、そんなに喜んでばかりもいられないという気がしてきた。
●現実的な使い途って、本当にあるのか
外部のパソコンからでもモバイル機器からでも、自宅のパソコンにアクセスできる。容量を気にすることなく。
これは確かに、すごい。
しかし、その前提となるためには、アクセスされる方のパソコンが起動していなくちゃいけない。「今からこのフォルダのこのファイルを外部からでも使いたい」とあらかじめわかっているのなら、こんな手段はとらないわけだし、いざという時にいつでも外部からアクセス可能な環境を維持するためには、四六時中、電源オンの状態を保たなければいけない。自分がそのPCの前にいないにも関わらず、だ。
自分が自宅にいて、外部からアクセスしないとわかっている時なら、電源は切ってもかまわないわけだ。外出している時は電源オンで、自宅にいる時は電源オフ(笑)。外部からもアクセスしたいという思いはあるが、そのためだけに、パソコンの電源を入れっぱなしをいうのはどうにも気持ち悪い。電気料金もバカにならない。
で、ここで耳寄りな情報がある。
Pogoplug デバイスの消費電力は公称4ワット、というのだ。実測でも5ワットという情報もある。
パソコンの消費電力は50~150ワットだから、Pogoplug デバイスに外付けHDを接続した際の消費電力を多く見積もっても、24時間電源オン状態のパソコンと、一日8時間電源オンのパソコン+24時間オンの Pogoplug デバイスとの電気料金の差額を考えると2年もかけずに、Pogoplug デバイス機器の購入金額をまかなえてしまうことに気付いた。
こりゃ、Pogoplug デバイス、「買い」ですわ。
こうして、まんまと Cloud Engines 社の策略にハメられてしまった結果、Amazon でポチッとしたわけだが、その Pogoplug デバイスについては次の記事で。